投資の世界で必ず耳にする「利回り」。投資家はこの利回りを計算することで、自分が投資する案件がどの程度有利なのかを判断します。
この記事では不動産投資における利回りの計算方法や読み解き方、相場観についてわかりやすくご説明します。
「利回り」は投資効率を示す指標
利回りとは、投資額に対して年間でどれくらいの利益が上がったのかを表す数値です。例えば、投資額100万円をある案件に投資し、1年後120万円の利益を得ることができれば、その投資案件は利回り20%ということになります。
・1年間の利益額(20万) ÷ 投資額(100万)× 100 = 20%
この利回りが高いほど、投資効率の良い優れた投資案件と言えます。
利回りを計算すれば、投資規模が異なる案件も比較できる
例えば、次の2つの投資案件ではどちらが優れた投資案件でしょうか。
・案件①:2,000万円投資して100万の利益
・案件②:5,000万円投資して200万円の利益
利益だけみれば、案件②のほうが高い利益を生んでいます。しかし、それぞれの利回りを前述した式から計算してみると
・案件①:1年間の利益額(100万) ÷ 投資額(2,000万)× 100 = 5%
・案件②:1年間の利益額(200万) ÷ 投資額(5,000万)× 100 = 4%
となり、案件①のほうが高い利回りで、効率的であることがわかります。
このように利回りを計算することで投資規模が異なる案件を比較することができます。
不動産物件が高利回りで売りに出る理由とは
このように、高利回りの不動産物件は魅力がありますが、相場よりも利回りが高い不動産物件には何らかの理由があります。よって、高利回りの不動産物件を購入する際には、どのような理由で利回りが高いのかを調べることが大切になってきます。
不動産物件が高利回りで売りに出る理由として、売主が売り急いでいることが考えられます。売主が何らかの事情で急いで現金が必要になった時には、物件価格を相場よりも安くして売りに出すことがあります。表面利回りの計算式は、想定される年間家賃収入÷物件の購入価格ですので、物件価格が安くなるほど表面利回りが高くなります。利回りが高い理由が売り急ぎの場合は、実質利回りも高ければ掘り出し物件ですので、購入しても大丈夫です。
不動産業者が収益物件の広告を出す際には、実質利回りではなく表面利回りを使います。表面利回りの計算では空室が発生していても満室の状態で計算しますので、実際は空室だらけの物件でも表面利回りは高くなります。空室率が高い高利回りの不動産物件は要注意で、いくら利回りが高くても机上の空論に過ぎません。よって、不動産物件を購入する際には実際に現地に行ってみて、自分の目で空室率などを確認することが大切です。それと同時に、実質利回りを正確に計算してみることも不動産投資では極めて大事なことです。
不動産投資の利回りの読み解き方
不動産投資の利回り計算の方法は大別して、表面利回りと実質利回りの2つがあります。
表面利回りは不動産広告で用いられている利回りで、「年間家賃収入 ÷ 物件の購入価格」で計算されます。不動産投資をする際には、購入時に仲介手数料や登記費用などの初期費用が必要になりますし、物件を保有しているだけで維持管理費などの諸経費が必要になります。また、空室が発生するリスクもありますが、表面利回りにはこれらの諸費用や諸経費、空室リスクなどが一切織り込まれていません。よって、表面利回りだけでシミュレーションをしてみても正確な収益を予測することは不可能です。
実質利回りは経費などを考慮した実質的な利回りであり、次の計算式で算定されます。
・(年間家賃収入 − 年間経費) ÷ (物件の購入価格+購入時諸経費) = 実質利回り
年間家賃収入は実際に入ってくる家賃収入ですので、空室率も織り込まれています。実際に入ってくる家賃収入から金利や維持管理費、固定資産税などの経費を差し引くことで、実質的な収入がいくらになるのかが判明します。また、物件購入時に必要な初期費用を物件の購入価格に加えることで、実質的な投下資金がいくらになるのかがわかります。
このように、実質利回りは想定の要素を排除した実質的な利回りであり、実質利回りに基いてシミュレーションをすると、正確な収益の予測をすることができます。
不動産投資の利回りの相場観
不動産物件の利回りは物件が所在する地域によって大きく異なります。東京や大阪などの大都市は地価が高いため、物件価格も高額になります。物件価格が高額になると利回りは低くなりますので、東京や大阪などの大都市の収益物件は他の地方と比べると利回りは低いです。東京の中古マンションの利回りの相場は4%から6%程度で、東京の新築マンションの利回りの相場は2%から4%程度です。
首都圏エリアや京阪神エリアなどの利回りは10%以下ですが、人口が少ない地方だと利回りの相場は10%を超えます。宮城県を除く東北地方や北海道の利回りの相場は10%を超えており、秋田県の収益物件の利回りの相場は15%程度です。関東甲信越地方では長野県の利回りが最も高く、長野県の利回りの相場は15%を超えています。東海地方では愛知県を除き、利回りの相場は12%前後です。中国四国地方では高知県を除き、全ての県の利回りは10%を超えています。九州沖縄地方では長崎県の利回りが最も高く、長崎県の利回りの相場は15%程度です。
このように、同じ日本でも地域によって利回りの相場が大きく違ってきますが、利回りが高い地方ほど空室率が高くなりますので、実際に利回り通りの収益が得られるとは限りません。繰り返しになりますが、不動産投資では表面利回りの高さだけに惑わされず、実質利回りに基いて物件を選定することが極めて大事になってきます。
まとめ
いかがでしょうか?
この記事では、不動産投資を行う上で重要な指標となる利回りについて、数字の意味と計算方法を説明しました。利回りを計算し、投資効率の良し悪しから投資案件を見極めることはどんな分野の投資家でも必要になるスキルです。
この記事を読んでいただいた読者の方には、利回りについてしっかり理解していただき、投資案件の優劣をしっかり判断してもらえればと思います。