イールドギャップを算定すると投資用物件の収益性とリスクを見極めることができ、目安目標値を設定することにより、投資の収益性を高めたりリスクヘッジをすることが可能になります。投資用物件を全額自己資金で購入するケースを除き、ほとんどの方は借入金で投資用物件を購入するため、イールドギャップは不動産投資における重要な指標であると言えます。
今回はイールドギャップの目安目標値や注意点など、詳しく解説していきます。
イールドギャップとは?
イールド(yield)とは利回りという意味で、イールドギャップ(yield gap)を直訳すると「利回りの相違」という意味になります。イールドギャップは投資用物件の利回りと借入金の金利との差であり、利回りから借入金の金利を差し引くことで簡単に求められます。
イールドギャップ計算式:実質利回り(%)− 借入金利(%)
実質利回りとは、「(年間家賃収入 − 年間経費)÷ 物件取得費用」のことです。たとえば、「年間家賃収入 − 年間経費」が144万円の物件を2,300万円で取得したら、実質利回りは6.26%(144万円 ÷ 2,300万円)になるということです。
これは、単純に物件取得費用を、家賃収入を基に何年で回収できるかという数値です。6.26%なら約15.9年(100% ÷ 6.26%)で回収できるという計算ですが、あくまで目安になります。
一方、借入金利とは、ローンを借り入れたときの金利になります。ローン金利は金融機関によっても違いますし、金利プランや借入時期によっても異なってきます。
イールドギャップの目的
不動産投資におけるイールドギャップは、収益性を判断するために使います。たとえば、投資物件の実質利回りが7%程度だったとします。5%程度が合格ラインと言われている実質利回りが7%は高い利回りと言えるでしょう。
ただ、金融機関が中々見つからずに、約3%程度の金利である不動産投資ローンを5%の金利で組んだとします。その場合は、イールドギャップは2%(7% − 5%)になり、5%の利回りで3%のローンを組んだときと変りません。そのため、いくら実質利回りが高くても、良い投資であるとは言い切れません。
つまり、物件の実質利回りだけでなく、支出額に大きく関わってくるローン金利も必ずチェックする必要があるということです。それを単純にイールドギャップでチェックすることができます。
イールドギャップの目安目標値とは
イールドギャップの目安目標値は、投資家のリスク許容度によって変わってきますし、地方と都市でも違ってきます。地方の投資用物件は高利回りですが、空室発生のリスクが高いため、イールドギャップは10%以上を目指すべきです。イールドギャップが10%以上あると空室が発生して実質利回りが低下した時でも、直ちにキャッシュフローが悪化するようなことはありません。都市部は利回りが低いため、必然的にイールドギャップの目安目標値も低くなります。
リスクを覚悟したうえで不動産投資で高収益を上げたい方は、イールドギャップの目標値をできるだけ高い数値に設定します。ただし、あまりにも目標値を上げてしまうと、金利が上昇した時や大量に空室が発生した時にはキャッシュフローが悪化して、不動産投資が失敗する恐れがあります。
イールドギャップのパターン
イールドギャップがプラスになる時のパターン
イールドギャップがプラスになる時のパターンは、収益を得られている時であり、不動産投資が成功していることの確かな証明になります。イールドギャップは利回りから金利を引いたものですので、金利が低下した時にはイールドギャップは必然的にプラスになります。よって、投資用物件の収益を増やすには、家賃収入を増やすか金利が低下するかのどちらかが必要というわけです。家賃収入を増やすには空室を減らして満室の状態を維持することが不可欠であり、金利を低い水準で維持するためには、低金利の時に固定金利で融資を受けることが必要です。
イールドギャップがマイナスになる時のパターン
イールドギャップがマイナスになる時のパターンは、十分な収益が得られていない時と金利が上昇している時です。イールドギャップがマイナスの時は不動産投資に失敗しており、空室が大量に発生しているか、借入金の金利負担で苦しんでいることが推察されます。金利の上昇は個人の力ではどうしようもありませんので、一刻も早く空室を埋めて家賃収入を増やすことが必要です。空室が埋まる見込みがない場合は、資金ショートを起こす前に損切りするしかありません。
イールドギャップの注意点
最後にイールドギャップの注意点を確認しておきましょう。
あくまで判断材料の一つ
イイールドギャップは判断基準の1つであるということを意識しておく必要があります。
そもそも不動産投資は、以下の点を判断基準に物件選びやローンを組みます。
・物件の実質利回り
・物件の立地
・室内の設備や仕様
・築年数などのスペック
イールドギャップは上記のような判断基準の1つです。そのため、当然イールドギャップだけで、投資するべきか判断してはいけません。また、一方でイールドギャップ抜きに投資の判断をしてしまうと、金利を加味せずに物件選びをしてしまいます。
そのため、イールドギャップだけを判断基準にはしないものの、イールドギャップも参考に物件選びはするべきと言えるでしょう。
表面利回りでの計算
先ほどイールドギャップの計算式は、「実質利回り(%)-借入金利(%)」と解説しました。しかし、これを実質金利ではなく表面金利で計算している人もいます。表面金利とは、「年間収入÷物件取得価格」という計算式です。つまり、実質利回りのように、年間経費を加味しない数値になるので、実質利回りよりは精度の落ちる数値になります。
あくまでイールドギャップの目的は「借入金利も加味して物件選びをする」ということなので、それが達成できるならばどちらでも問題ありません。
しかし、表面利回りでイールドギャップを計算すると、潜在するリスクを十分に織り込めなくなる可能性があります。また、イールドギャップは融資期間が一切考慮されていないため、長期融資を受けることができなかった時には毎月の借入金の返済比率が高くなり、空室が発生したり金利が上昇した時には、一瞬で資金ショートを起こすリスクがあるため注意が必要です。
まとめ
いかがでしょうか?
イールドギャップで導き出した数字はあくまでも机上の想定値ですので、この数字だけを過信するのは非常に危険です。不動産投資をする際にはイールドギャップだけにこだわるのではなく、様々な指標を使って収益性とリスクを計算し、総合的に検討する姿勢が大切です。