不動産投資のメリットは、家賃収入(インカムゲイン)を得ながら、資産価値の上昇によるキャピタルゲインの獲得を目指せることです。しかし、地価が右肩上がりで上昇していた頃とは異なり、現在は地価の大幅な上昇は見込めないのが現状です。
デフレ下での不動産投資では、購入時の価格よりも売却時の価格の方が低くなるケースが多いため、不動産投資を成功させるためには、売却する時期を探る出口戦略が非常に重要になってきます。
今回は、不動産投資を成功させるための出口戦略について考えていきます。
出口戦略とは
不動産投資における出口戦略とは、その不動産を将来的に売却することを見越して、物件選びをするということです。つまり、売却という不動産投資の「出口」を考えて投資するという意味になります。一般的に、不動産投資をする際は、以下2つの方法で収益を上げます。
・インカムゲイン
・キャピタルゲイン
インカムゲインは、家賃収入という定期的に得られる収入のことです。一方、キャピタルゲインは売却益のことを指します。通常、不動産は長い期間保有するものであり、インカムゲインをメインに考えます。
しかし、不動産は1,000万円単位の高額な商品なので、上手く売却できればキャピタルゲインも高額になります。そのため、きちんとキャピタルゲインまで考えた戦略である、「出口戦略」を加味することが大事というわけです。
売却を検討すべきタイミングとは
不動産投資の最終的な利益は、売却価格から購入価格を差し引き、これに家賃から経費を差し引いた純利益を加えた金額になります。よって例えば、購入価格が5,000万円で家賃収入の純利益が3,000万円の収益物件を4,000万円で売却すると、2,000万円の利益になります。
(4,000万円 - 5,000万円)+ 3,000万円 = 2,000万円
このように、投資の収支がプラスであれば、売却を検討してみても良いでしょう。また、周辺の地価が高騰して、購入価格よりも売却価格の方が高くなり、これまで十分な家賃収入が得られていた場合も売却を検討すべきタイミングです。
もちろん、手放さずにそのまま保有していても構いませんが、物件の経年劣化による維持管理費の上昇や空室の増加による利回りの低下、将来における地価の下落による資産価値の目減りのリスクも考慮して、よく検討することが大切です。大規模修繕工事が必要になる時や空室の増加が目立ってきた時、立地している地域が衰退している時などは、売却を検討することをおすすめします。
キャッシュフローが悪化している時も売却を検討すべきタイミングです。そのままの状態で賃貸経営を続けていてもキャッシュフローの改善が見込めない時には、損失を最小限に食い止めるために、損切り(売却)をすることが望ましいです。特に、ローンの金利の上昇が原因でキャッシュフローが悪化した時には、早めに売却しないと資金ショートを起こす恐れがあります。
株式投資と不動産投資との比較から見える特徴
株式投資はキャピタルゲインを目的とする投資であり、購入時の株価よりも売却時の株価が高ければ利益になります。しかし、購入した株が確実に値上がりするとは限らず、株価が下落すると損失を被ります。昔は株価も不動産と同じように右肩上がりで上昇していましたので、株式を保有していると儲かることが多かったですが、近年株価は乱高下を繰り返しており、絶対に儲かるわけではありません。
不動産投資は株式投資とは異なり、家賃収入というインカムゲインを目的とする投資であり、十分な家賃収入が得られていた場合は、購入時よりも売却時の価格が低くなっていても利益が出ます。不動産投資は物件の選定と出口戦略を間違わなければ株式投資よりも利益が得られる可能性は高く、株式投資よりも利益を出しやすい投資であると言えます。
出口戦略における物件選びのポイント
利回りだけで物件を選ばない
出口戦略を考えるとき大事なことは、物件を選ぶときに利回りだけで選ばないという点です。利回りとは、「(年間賃料収入 - 年間経費)÷ 物件取得価格」で計算する数値です。利回りとは簡単にいうと、「物件取得価格を何年経てば回収できるのか?」ということです。
たとえば、利回り8%の物件であれば、12.5年(100% ÷ 8%)で物件取得価格を回収できるという計算です。突発的な支出もありますし、空室や家賃下落のリスクもあるので、あくまで目安ではあります。
不動産投資用の物件を選ぶときには、この利回りという指標を最も重視します。しかし出口戦略をきちんと考えるとしたら、この利回りだけに注目してはいけません。なぜなら、「高く売却できるか?」という観点と、「継続的に家賃収入を得られるか?」という観点は別物だからです。
つまり、出口戦略の考え方として重要なのは、従来のインカムゲインだけをメインにした、利回り重視の考えを捨てるということになります。もちろん、利回りも重要な指標なのですが、出口戦略も考えるならそれだけで物件を選んではいけません。
相場価格について考える
出口戦略を考えた物件選びは、相場価格と需要について考える必要があります。まず、検討している物件があったら、不動産会社にその物件の売却金額を査定してもらいましょう。なぜかというと、投資用不動産の場合は賃貸メインになるので、将来的な売却についての話はあまりしないからです。
つまり、利回りだけに注目すると、「利回りは高いけれども、売却査定額は相場以上の割高物件になっている」という物件もあるということです。このような物件は、賃貸にしたら利回りは良いかもしれませんが、割高で買っている分、キャピタルゲインは低い可能性があります。
周辺物件の確認をする
周辺に広い空き地があったり、賃貸物件ではなく分譲物件が多かったりするエリアも避けましょう。このような状況の場合、いざ物件を売るときに競合物件が多くなるリスクがあるからです。
広い空き地があれば新築マンションが建つかもしれませんし、分譲マンションが多ければ、いつ売りに出されるか分かりません。自分の物件を売却するタイミングで競合物件が多ければ、集客が分散して高く売れる機会を逃す可能性があるのです。
このように、出口戦略を考える上では、将来的にキャピタルゲインを得やすい物件を選定しましょう。
築古物件の出口戦略はどう対処するべきか
築古物件のメリットは、購入価格を低く抑えることができることと高利回りであることですが、経年劣化が進むと売りにくくなるというデメリットが存在します。築古物件の出口戦略を考える場合は、築浅物件よりも売りにくいということを考慮することが大事になってきます。
築古の木造アパートはそのままの状態では売りにくいので、解体して更地にすると売却しやすくなります。更地にすると購入者はいろいろな用途に利用することができますので、買い手が付きやすいのです。周辺地域が衰退していなくて住宅や店舗が多い地域だと、売却価格も購入価格と同程度の価格が見込めるため、これまで十分な家賃収入を得られていた場合は解体費用を考慮しても利益が出ることが多いです。
築古の区分マンションは築古の木造アパートのような出口戦略を取ることはできないため、他の方法で出口戦略を考えることが必要になってきます。これまでに十分な利益が出ている場合は早めに売却することが望ましく、大規模なリフォーム工事が必要になる前に売却することをおすすめします。築古の区分マンションは出口戦略が難しいため、あらかじめ出口を考えたうえで購入することが大切です。
まとめ いかがでしょうか?
不動産投資を行う場合、キャピタルゲインまで考えた出口戦略を加味しておくことが重要です。不動産投資を成功させるためにも、出口戦略を考えた物件選びを行い、売却のタイミングを図るようにしましょう。